十年後のアナタへ

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ネットで『十年後のアナタへ』という変な名前の鏡を買った。 段ボールで届けられたものは、一見普通の置き鏡。 しかし。その鏡を覗くと、そこには大人びた綺麗な女性が映っていた。 因みに私は、現役ピチピチの女子高校生十七歳。 でも鏡に映っている女性は、スーツを着た社会人。その目元や骨格は私によく似ていた。 「ん?というか……これ私じゃね?」 頬を触ったり、持ち上げたりして顔を動かすと、鏡に映る女性も同じ動きをしていた。 「なるほど……『十年後のアナタへ』の意味が分かった気がした」 どうやらこの鏡を覗くと、十年後の自分の姿が映し出されるらしい。 「ってことは……十年後の私は、こんな美人な社会人に育つっていうこと?」 成績は悪くて、部活もしてなくて、趣味も特技もなにもない私だけど。将来はこんなリクルート美人になっている。 「マジか」 正直、私このままで大丈夫かな?なんて心配してたけど。十年後にはちゃんとした大人になってるみたいだし。これからもこのままでいいってことだよね? 「未来が見えるっていいねぇ~~!!不安が無いよ~~」 なんて……思っていた十年前の私に拳をぶつけたい。 未来が見えたって良い事なんてないって。 安心しきった私は、そのまま成績は落ち続け。特技も趣味もなく。就職先もなかなか決まらなくて、やっとのことで入れた場所はブラック企業。 上司からのパワハラで精神を病んでしまった私は、ひきこもり。 楽しみも無く。やることもなく。ただただ孤独な時間だけが過ぎていく。 あの時、鏡を見なければ。鏡なんて買わなければ。 いや……未来なんて私の行動一つ次第ですべてが変わることだってあるんだと、ちゃんと理解していれば……。 「っ……助けてよ」 十年前に買った鏡。 パッパッとほこりを払って、私は再びその鏡を覗いた。 そこにはーー誰も映っていなかった。
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