思い出はタイムマシン

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 昔、昔、私はタイムマシンに憧れていた。ずっと先の未来に飛んで、最新のゲーム機が欲しかったのだ。  だが、時間の壁を物質として跳び越えるのは不可能であるらしい。  少なくとも三次元的な空間に存在する地球人は時間と言う第四次元軸をパラメータとして扱うことができないというのだ。  大学にてそれなりに偉い教授からその言葉を聞いて、私は酷い失望を覚えた。  それじゃあ、我々の前に猫型ロボットが現れる未来は来ないという事ではないか。 ***  今日、6月20日、28歳に成った私は十年前まで通い詰めていたとある道路をテクテクと歩いていた。  本日は我が母校の同窓会なのである。  卒業10周年を記念とした同窓会で、当時のクラスメイトや友人達も参加するようだった。  テクテクテクテク。  懐かしの通学路。  ゲームセンターに行こう。古本屋に行こう。試験がめんどい。ゲームのボスが倒せない。  友と駄弁りながら歩き詰めた道へ足音を立てながら、思い出が溢れてきた。  10年。昔はもっと長い時間だと思っていた。  18歳の私にとって8歳の私も28歳の私も、もはや未知の自分で、遠い存在に感じていた筈だ。  だが、今の28歳の私にとって18歳の私は、とても近しい存在であった。  テクテクテクテク、テク。  私は一度立ち止まった。18歳の頃を鮮明に思い出せたという事実に愕然としたのだ。  ああ、そうか。私は未来へのタイムマシンを持つことはできなかった。だが、過去へ跳ぶタイムマシンを持つことはできたのか。  テク、テクテクテクテク。  歩みを私は再開した。  思い出のタイムマシンに乗って、我らが母校へと帰っていく。  10年前の私よ、10年後の私が会いに来たぞ。
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