山籠り、その果て

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ウグイスが、霧の中で鳴いた。 針葉樹ひしめく山が纏う空気は冷たく、厳しく、しかし清らかであった。 私の一番弟子が10年の山籠りを終えて、今日帰ってくるのだ。 毎晩合図の狼煙は上がり続けていたから、きっとあいつは無事なのだろう。それでも実際に顔を見るまでは、とても平静ではいられなかった。 私は手紙を握り締めた。10年前、あいつがこの山を登った時に書いた手紙。この日の為に、修行を終えたあいつの為に、綴った手紙。 武闘家として一人前になった、あいつ。どんな顔をして、降りてくるのだろう。 不安と、期待と。高鳴る鼓動を抑えながら、私は待っていた。 足音がする。人影だ。まっすぐこちらに向かってくる。 あいつだ。間違いない! 「よくぞ、帰ってきた!お前は一人前だ!」 思わず手放しで喜んでしまう。師匠失格かもしれないな、とも思ったが、安堵、達成感、諸々の坩堝に私は酔っていた。 真っ直ぐ、迷いのない視線。こいつはやり遂げたのだ!
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