桜の木で待つ

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あの日のことは今でも覚えている。 あれは丁度10年前の3月10日。今日と同じ日付だ。 中学校の卒業式を終えた僕は仲のよかった友達6人とタイムカプセルを埋めることになった。 突然決まったものだから皆大切なものなんて何も用意できていない。 「皆で将来の自分に向けて手紙を書こう! それを10年後、皆で集まって読むんだ!」 皆のまとめ役だった彰が言った。 少し恥ずかしいが紙に未来の自分へ手紙を書く。 「翔太。手紙書けたか?」 先に手紙を書き終えた彰が話しかけてきた。 もう終わる、といいながら最後の文を書き終えると 手紙を折り畳んで彰に渡した。 彰は皆から手紙を受けとると、どこからか持ってきたクッキーの缶に手紙を入れた。 「どこに埋めよう?」 「どっかいい所ないかな~」 「校庭の角に一本だけ高さが低い桜の木がある、その下なんてどうだ?」 埋める場所を決めかねていた僕たちは、またもや 彰の意見に賛同し校庭に向かった。 周りの桜の木よりも半分ほどの大きさの木。 これなら目印にもなるし丁度いいだろう。
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