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ふいにピアノの音が聞こえてきた。
舞台の下にあるグランドピアノ。長い髪をきれいなツインテールにしている女の子が、小さな手を器用に動かして伴奏を始めた。
気が付くと、周りの空いていた椅子は全て埋まっていて、大きな拍手が一斉に起こる。
プログラムを膝に置き、俺も手を叩いた。
三列の列を作って舞台に上がってきた子供たち。全員がマスクを付けている。
舞台の下で見ている保護者も、もちろん全員マスクをしている。
子供たちは静かに間隔を空けて、決められた位置に立った。
二列目の真ん中に継がいた。
俺を見つけて照れくさそうに笑う。
マスクに顔の半分が隠れていても、その笑顔は誰かさんにそっくりだ。
伴奏に合わせて歌うのかと思ったら、そうじゃなかった。
そういえば子供たちのイベントにつきものの合唱は、もはや死語らしい。
ピアノの音が止むと、生徒たちが順番にセリフを言う「呼びかけ」が始まった。
「おとうさん」
「おかあさん」
「今日は僕たちの二分の一成人式です」
「生まれてから10年がたち」
「私たちはこんなに大きくなりました」
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