ずっとあい死てる

3/14
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
新型コロナウィルスってやつが、どうやらかなりやばいらしい。 最初は海外で起こっている疫病って感覚だった。いつの間にか日本にも広がって、気がつけば感染者の棒線グラフがとんでもないことになっていた。 緊急事態宣言が出されると、都心に向かう電車で通勤していた俺もテレワークに切り替えられた。 支給されたノートパソコンで、家で仕事をしている。急なことだったから準備不足で、Wi-Fiがあるリビングが仕事部屋になってしまった。 だから日中テレビも電話もできないと君は言う。だけど俺の就業時間が過ぎても、君はテレビを観なくなった。理由は聞かなくてもわかる。 そこから流れる情報が怖くてたまらないから。 友達も実家の親も心配そうに電話をくれる。 「気をつけなさいよ。妊娠中なんだから」 そんなことは俺たちが一番よくわかっている。 マスクの備蓄がなくなったとき、君は子供のために買っておいたガーゼのハンカチでマスクを作った。 100円ショップの手ぬぐいが売り切れると、祭りで使う豆絞りでちょっと粋なマスクを作り、俺に装着して写真を撮った。 何なら少し楽しんでいるようにも見えた。いつも笑っている君の恐怖を、俺は少しも理解していなかった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!