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新型コロナウィルスってやつが、どうやらかなりやばいらしい。
最初は海外で起こっている疫病って感覚だった。いつの間にか日本にも広がって、気がつけば感染者の棒線グラフがとんでもないことになっていた。
緊急事態宣言が出されると、都心に向かう電車で通勤していた俺もテレワークに切り替えられた。
支給されたノートパソコンで、家で仕事をしている。急なことだったから準備不足で、Wi-Fiがあるリビングが仕事部屋になってしまった。
だから日中テレビも電話もできないと君は言う。だけど俺の就業時間が過ぎても、君はテレビを観なくなった。理由は聞かなくてもわかる。
そこから流れる情報が怖くてたまらないから。
友達も実家の親も心配そうに電話をくれる。
「気をつけなさいよ。妊娠中なんだから」
そんなことは俺たちが一番よくわかっている。
マスクの備蓄がなくなったとき、君は子供のために買っておいたガーゼのハンカチでマスクを作った。
100円ショップの手ぬぐいが売り切れると、祭りで使う豆絞りでちょっと粋なマスクを作り、俺に装着して写真を撮った。
何なら少し楽しんでいるようにも見えた。いつも笑っている君の恐怖を、俺は少しも理解していなかった。
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