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それからは君とラインだけでやり取りする日々が始まった。
『朝、ちゃんと起きれてる?』
『ちゃんと食べてる?』
『ちゃんと寝てる?ゲームばかりしてちゃだめだよ』
やたらと「ちゃんと」を連打する君。俺はそんなにちゃんとしてない?
なんだろう、俺を心配する文字だけを送ってくる、君が優しくて調子が狂うよ。
だから俺もなるべく優しい言葉を選んで君に送った。
『体調はどう?』
『食事はおいしい?』
『何かほしいものある?』
離れているのは寂しいけど、君とお腹の子が元気ならそれでいい。
君たちが二人になって戻ってくる頃には、緊急事態も収束して、初夏の風がウィルスを吹き飛ばしてくれているだろう。
俺はそんな単純明快で当たり前の近未来を予測して、毎日カップラーメンにお湯を注いでいた。
そのニュースが飛び込んできたのは突然だった。
県内で初めてのクラスター発生。スマホの通知に出ていた病院の名前は、君がいる場所だった。
今朝送った『おはよう』には既読がついていない。
病院に電話しても繋がらない。
ニュース番組をはしごしても知りたいことは教えてくれない。
嫌な予感に体が震えてくる。
何もできない自分がもどかしくて、その夜は一睡もできなかった。
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