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10年前の君へ、10年後の俺から
---何万人も、死なせてしまった。
それは突然起きた戦争で、災害で、どうしようもない天変地異だった。
自分だちだって、初めからそんなつもりはなかったのだ。
「これだけ殺しておいて?」
そうやって責められても分からない。
気がついたら、世界は既にそうなっていたから。
---これは、その報いなのだろうか。
今世界には、自分以外の仲間は誰も残っていない。
初め、奴らは俺たちを恐れて逃げ回った。
次に、ありとあらゆる方法で俺たちに反撃をし始めた。
結果、何億何兆か。
数えもできない数の仲間たちが、虐殺された。
目には目を、歯には歯を。
「やられたことには必ず報いが来る。それはこの世界の理なのだ」
俺がある時、海を渡ってその国から逃げようとした日。
一緒にいた仲間は、港で猛毒を喰らい全員殺された。
あれから10年。
自分だけが今、海を渡り空を飛び、地上を伝ってこの地に舞い降りた。
ここはどこだろう。やけに蒸し暑い。
南の熱帯雨林のどこかなのだろうか。
ちなみに、俺は10歳になったわけではない。
何度も何度も、数えきれない回数を生まれ変わりここまでやってきた。
覚えているのは僅かな記憶だ。
自分達に怯える人間たち、
自分たちを恐れる人間たち、
そして自分だちを根絶やしにしてきた人間たち。
なぜか俺はこんなところでだったひとつ、生き延びてしまっているけれど。
---10年前の俺、あなたはこんなことを想像しましたか?
---10年後の俺は、場所も分からない森の中で、たったひとつで生きています。
ころなういるすです。
<終>
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