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手を繋いだまま静留が顔を背けたから、彼が纏うには大きいシャツの襟元から桜色の突起がちらりとのぞく。
「…おそうって、東弥さん、なにかするの…?」
「うん。静留が可愛いから、こういうことしたくなる。」
やれやれとまだわかっていない様子の彼を見つめ、東弥は繋いだ手を片方解いた。
そのままシャツの裾から滑り込ませ、突起の片方に優しく親指を押し付ける。
「ゃっ…。」
今度こそ意味を理解したのか彼はのそのそと東弥の身体から降り、布団の中に潜り込んで猫のように丸くなってしまった。
__かわい。
愛しさが熱情を上回ったところで少し冷静になった東弥はひとまず布団から起き上がる。
そして一気に身体を襲った寒さに、静留の行動の意味を理解した。
たしかにシャツ一枚で過ごすには低すぎる気温だ。朝静留がそのままリビングに行っていたら風邪をひいてしまったかもしれない。
クローゼットを開け厚手のカーディガンを2枚取り出し、片方を静留に持っていく。
「静留。」
布団を少しだけ開けて囁きかけるとぴくりと丸まった身体が動いた。
「意地悪してごめんね。今日は本当に寒いし、お布団の外に出る前にこれを着ようね。」
「…。」
説得するも返事はない。
「静留が風邪をひいたら悲しいな。それに早く静留のこと抱きしめたい。だめかな?」
今度はがさごそと音がして、ひょっこりと布団の外に顔が出された。
布団が剥がれてしまわないように気をつけながらシャツの上にカーディガンを着せ、それから白い首にリボンを結ぶ。
「あったかい。」
静留は嬉しそうに布団から飛び出し東弥に向けて花開くような笑みを浮かべた。
この寒いのに、そこだけ春が訪れたみたいに愛らしい。
「ご飯はあったかいものにしようね。一緒に作ってくれる?」
「うん!」
「おいで。」
彼に向けて手を広げて見せれば華奢な身体が躊躇いなく東弥の胸元に飛び込んでくる。
2人でショッピングモールに出かけて温かい部屋着でも買ってあげようと、そんなことを思いながら静留を抱え階段を降り、静留と隣り合わせでキッチンに立った。
なんて幸せな朝だろう。
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