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「えっ…?」
“焦っているだけ”、という言葉の意味がわからず東弥は彼に説明を仰ぐ。
「すごく焦っているように見える。まだclaimをしていないから静留君のことを誰かに取られるんじゃないかって不安なだけじゃないかな。
もうclaimを終わらせた僕が言うのもなんだけれど、お互いが唯一の存在だから焦らなくてもいいと思うよ。ゆっくり進めていけばいい。
それに支配したいという思いが暴走しそうになってもそれ以上に大切だという気持ちが大きいはずだから、東弥君は大丈夫。」
__焦ってるだけ…。
由良の説明を聞いて、先ほどまで重りのように心にずっしりとのしかかっていた不安が急に軽くなった。
まだ自分のものにしてはいないから誰かに取られそうで焦っている。
確かにそうなのかもしれない。
そして彼の“お互いが唯一だから焦らなくてもいい”、“支配欲より大切さが大きい”、と言う2つの言葉は、東弥にとって何かとても大きな意味をもって響いた。
そう、焦らなくていい。
東弥には静留が唯一で、静留にも東弥が唯一で。そんなこと、もうここ1ヶ月で痛いほどわかったのだから。
「ありがとうございます。…俺、全然気付かなかった…。」
「よかった、さっきまでとても思い詰めた顔をしていたから。」
「はい。すごく戸惑ってしまって…。大切にゆっくり進めていこうと思います。」
「それがいいよ。」
それからは大学での幹斗のことについて色々質問をされ、今度は由良に感謝を告げられた。
「静留。」
楽屋に戻り4人に礼を述べた後梨花の元に行き静留を起こせば、彼は瞳に東弥を映し柔らかに笑む。
そしていつものように東弥の身体に無邪気にぎゅっと抱きついた。
愛しさに口元が綻ぶ。
「幹斗達がきているから、楽屋に行こうか。」
「!!」
その後結局幹斗に直接お菓子のブーケを渡してもらい、甘いものが好きな静留はキラキラと目を輝かせた。
__相談してよかった…。
嬉しそうな様子の静留を横目に、東弥はぎゅっと目を細めて。
そっとその小さな頭を優しく撫でたのだった。
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