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(静留side)
「眠くないの?」
東弥の膝の上、後ろから抱きしめられながら静留はこくりとうなずいた。
コンサートが終わって疲れただろうからと東弥が心配してシャワーやご飯を早めに済ませるように計らってくれたが、コンサート直後にぐっすり眠ってしまったので実のところあまり眠くない。
今はソファーでゆったりと東弥の温もりに身体を預けている。
「疲れてもいない?」
さらに質問を重ねながら、東弥は静留の頭の上に優しく顎を乗せた。
東弥と触れる面積が大きくなり気持ちいい。とても安心する。
「うん。」
「じゃあ、準備の続き、してもいい?」
「うん。
…!?」
静留はあまり何も考えずふわふわとした状態で頷いたが、自分が何を言ったのかに気がついて慌てて東弥を振り返った。
視線の先に優しく細められたダークブラウンの瞳が映る。
彼は静留をぬいぐるみでも抱くように軽々と持ち上げ向かい合わせに座らせると、今度は静留の耳元に近づいてきてゆっくりと唇を開いた。
熱っぽい吐息が鼓膜を撫でる。
「…だめ?」
そのままマシュマロみたいに甘い声で囁かれて。
ずるい、と思った。普段格好いいくせに、こんな風に甘えるように言われたら断ることができない。
もちろんそういう言い方をされなかったところで断るつもりはないけれど。
「…だめ、じゃ、ない…。」
__あつい…。
先ほどまで安心して温かかったのに、今はあつくてたまらない。
なんとなく恥ずかしくなった静留は東弥から目を逸らし俯く。
心臓がうるさい。
切れ長の瞳から弱く漏れるglareも甘く笑んだ唇も格好良くて、それを見ているだけでどきどきしてしまうのに、初めて東弥の方からそういう行為を求められた。
自分から望む時とはまた違った胸の疼きを教えられ戸惑ってしまう。
「ベッド行こうか。」
しばらく黙って俯いていると再び色を帯びた甘い声が囁いた。
「…うん…。」
肯定を示せばひょいと身体が持ち上げられ、いつものように横抱きにされる。
そのまま彼は静留をお姫様のように優しくベッドに横たえると、シーツに広がるたおやかな髪をかき分け額に淡い口づけを落とした。
それから男らしい硬質な身体が覆いかぶさるようにして逃げ道を塞いで。
どうしていいかわからずに彼の頬に手を伸ばせば、優しくその手を掴まれ、形の良い唇がそっと静留の手の甲に触れた。
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