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何を間違えてしまったのか。
静留の涙に慌てていると、白い手がすがるように東弥のシャツの襟をそっと引いた。
「…どうしたの…?」
東弥の質問に静留は泣きながらも震える唇をゆっくりと開く。
「…め、…いで…。」
「…え?」
途切れ途切れで上手く聞き取れない。
しかし今の状態のままもう一度言葉を紡がせたところで彼の呼吸が苦しくなるだけだろうということもその様子から悟ることができた。
嘔吐きながらひゅぅひゅぅと苦しそうに息をする姿は、あまりに辛そうで見ているだけでも心が痛む。
「静留、俺が悪かった。泣くのをやめたらなんでも静留のお願いを聞くから、落ち着いてゆっくり呼吸をして。」
彼を向かい合わせに膝に乗せ、抱きしめとんとんと背中を叩いていく。
東弥の腕の中にすっぽりおさまった生まれたままの彼の身体は、考えていたよりもずっと華奢で、すこしでも力を込めたら折れてしまいそうだ。
「ゆっくり吐いて。…そう、上手。」
耳元で優しく言い聞かせるうちにだんだんと彼の震えが止まっていく。
しばらくして完全に落ち着いた後、静留は緊張した面持ちで顔を上げじっと東弥の目を見つめた。
きっと先ほど言っていたことをもう一度伝えたいのだろう。
「…うん、なんて言いたかったのかSay. 」
弱くglareを放ちながら言葉を促す。
「…あの、ね、こわいけど、…やめないでほしいの…。」
「えっ…?」
“怖いのにやめないでほしい。”
予想外の答えに驚いた東弥は静留を見据え一瞬固まった。
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