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(静留side) 「着いたよ。ここから少し歩くけど、寒いから車の中で待ってる?」 クリスマスイブの日、一緒にケーキを取りに行った車の中で、ふと東弥に尋ねられ、静留はふるふると首を横に振った。 東弥と一緒にいられるのならば寒い方がいい。 「そっか。じゃあ一緒に行こうか。」 「うん!」 大きな手に頭を撫でられる感覚が心地良くて静留は目を細める。 解鍵音とともに外に出れば、身体の芯まで凍りつきそうな冷たい空気にさらされた。 「寒い?」 いつものように手を繋ごうと運転席側から静留のそばに歩いてきた東弥が、静留の様子を見て心配そうに問いかける。 「…すこし…でも、いっしょにいく!!」 彼がポケットから鍵を取り出そうとしたので静留は目と口で一緒に行きたいと訴えた。 東弥はすこし考えるようにしたあと、自らのマフラーをほどき、ふわりと静留の首元にかけてくれた。 「じっとしていてね。」 甘いglareを放ちながら言われ静留はぴたりと固まる。 真剣な表情で静留のマフラーを結び始めた彼の、吐く息が頬にかかるほど距離が近い。 東弥の端正な顔立ちを至近距離で見た静留は急に心臓が早くなり、溜まった熱を紛らわせようとそっと視線を逸らした。 「できた。もう寒くない?」 マフラーを結び終えると、切れ長の瞳を愛しげに細めた彼が静留に優しく笑いかけてくれる。 「う、うん…。」 静留はしどろもどろになりながらうなずいた。 確かに寒くはなくなったが、それが東弥のマフラーのおかげなのか静留の体温が上がったせいなのかわからない。 「よかった。あとはこうして…行こうか。」 さらに東弥は静留の片手に自分がしていた手袋をはめ、静留と自分の手袋をしていない手同士を繋ぐとコートのポケットに入れた。 __あったかい…。 彼の温もりに安心して静留は口元を綻ばせる。 「静留、かわいいね。似合ってる。」 「!!」 しかし不意打ちで東弥がそう言ったから収まり始めていた胸の疼きがまた加速を始めた。 彼から貰うかわいいと言う言葉を不必要に意識し始めたのはいつからだろうか。 ふと、そんなことを考える。 少なくとも彼と出会うまで、静留はそれを言われたところで嬉しいとしか思わなかったはずだ。 今はその言葉を彼が紡いだ時、いつだってこうして身体が熱くなる。 __どうしてだろう…。 結局いくら考えたところで答えが出ることはなく、そうしているうちにお菓子屋さんに到着し、静留の意識は違う方向に向いた。
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