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「挿れるね。」
入り口に東弥の先端がピッタリと当てられる。
そこはすでに熱くなっている静留の蕾よりもさらに熱く、静留はその熱に驚く一方で、彼も自分を求めてくれているのだと理解し安心した。
大きさも熱さも怖くない。
その証拠に、静留の入り口は彼の先端に吸い付いて離れようとしない。
ゆっくりと、質量を持った楔が中に埋め込まれていく。
「痛くない?」
こくり、と静留はまた一度頷く。
丁寧に開かれたその部分は痛みも抵抗もなく彼の熱を飲み込み、むしろ指とは違う滑らかな表面に内壁を擦られる生理的な快楽で静留の瞳はしっとりと濡れた。
大きく開かれた足の間からは結合部がしっかりのぞいている。
恥ずかしい、と思う。
そこは本来、他人に見せてはいけないところだから。
しかしそれと同時に彼と繋がっているという事実がどうしようもなく嬉しい。
やがてその熱はぴったりと静留の奥まで埋め込まれ、先ほどまで慎重に結合部を眺めていた東弥が今度は静留の瞳を覗き込み、優しく微笑みながら静留の頭を撫でた。
抱きしめられ、肌が密着する。
「…全部入ったよ。」
熱を纏わない、ただ愛しさに溢れた綿菓子みたいに優しい声に安心して、静留は彼に身を預けた。
幸せでたまらない。
しかし彼の切れ長の瞳から一筋溢れた涙に気が付き、心配になって彼の頬にそっと手を触れた。
静留はこんなにも幸せなのに、彼はどうして泣いているのだろうか。
胸が締め付けられるようにずきずきと痛む。
「東弥さん、…くるしい?」
「…いや、そうじゃないんだけど…。あれ、俺、どうしたんだろう…。」
静留の言葉を受けた東弥が自分の頬に手を当て驚いたように目を見開いた。
「…きもちく、ない…?」
「ううん、すごく気持ちいい。静留の中、俺のために作られたみたいだ。温かくて、安心して…。」
「…?」
「…こんな風に満たされたの、初めてなんだ。だから幸せすぎて泣いちゃったみたい。ありがとう、静留。」
東弥の流した優しい涙が花びらのようにはらはらと静留の頬を濡らしていく。
過去にその行為を“幸せではなかった”と、どこか遠くを見つめながら呆然と口にしていた彼が、今静留とのその行為で涙を流し、幸せだとはっきり伝えてくれた。
そのことが嬉しくて、静留は微笑む。
「ぼくも、ね、…とってもしあわせ。」
「ありがとう。嬉しいよ。」
どちらからともなく唇が重なり、互いの肌もまたピッタリと重なった。
「静留、少し動いてもいいかな?」
「うん。」
東弥の屹立がゆっくりと中を揺する。
緩やかな抽挿を受けながら、静留は東弥の広い背中に腕を回し、東弥さん、東弥さん、と何度も彼の名を呼んだ。
理由はわからない。
けれど、こんなにも幸せなはずなのにそれと同時に胸や身体がひどく切なく疼いていて、その疼きが彼の名前を呼ばせたのかもしれないと、ぼんやりと頭の隅で考えた。
繋がった部分から広がる快楽の波は次第に大きくなり静留の身体をのたうち回る。
この熱は大きすぎて静留には苦しいのに、彼から与えられたものだと思うともっと欲しいと望んでしまう。
頭の中は彼のことでいっぱいで、気持ちいい感覚は強すぎて、自分が自分でなくなりそうで少しだけ怖い。
不安でぎゅっと目を瞑った瞬間、静留の手がそっと包まれた。
「静留、大丈夫だよ。俺だけ見てて。」
はっとして目を開けると視界に彼の瞳が映る。
その眼差しはいつもと変わらず、否、いつも以上に優しく、静留の不安をあっさりと包み込んでくれて。
「…そう、上手。怖くないよ。一緒に気持ちよくなろうね。」
触れるだけの口づけを合図に、少しずつ中の動きが加速した。
じゅ、じゅ、と淫らに水音を響かせる結合部が快楽で蕩け、彼との境界が次第に曖昧になっていく。
併せて身体を支配する熱がさらに暴走を始めて。
けれどもう怖くはなかった。
やがて抱えきれなくなった熱が花火のように弾け、静留の中を痙攣させる。
それと同時に東弥が小さく呻き声をあげ、強く脈打った彼の屹立が、静留の中を温かく満たした。
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