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エピローグ
(東弥side)
ぴぴぴ…
アラームの音で目を覚ました東弥は、まだ腕の中ですやすやと眠っている静留の姿を目に映し、愛しさに思わず口元を綻ばせた。
アラームの音でも起きないなんて、きっと相当疲れているのだろう。
そしてその原因を作ったのが自分だと思うと、愛しくてたまらない。
昨夜、初めて静留を抱いた。
小さな蕾に東弥の熱を受け入れながら開かれた白く細い足を振るわせ、身を捩り喘ぎながら慣れない快楽に耐える姿。
紅潮した透き通るように白い肌、震える長いまつ毛、潤んだオニキスの瞳。
そしてそれらが醸し出す妖艶とはまた違う危ない色気。
一瞬一瞬が宝石のように輝いていて、全ての瞬間でシャッターを切ってジュエリーボックスに収めたいほど、東弥を受け入れている間の彼は儚く美しかった。
しかも昨夜の感動はそれだけに止まらない。
今までの相手と彼とでは何もかもが違うとわかっていたはずなのに、繋がった瞬間に様々な感情が込み上げて、東弥は気づかないうちに泣いてしまった。
そして、collarを渡した後で彼が紡いだ“愛してる”。
あの言葉を紡いでいる静留の表情は、今思い出しても泣きそうになるほど優しかった。
珊瑚色の唇は端が緩やかに持ち上げられ、愛しげに細められたつぶらな瞳は東弥の瞳をまっすぐに見つめていて。
__…幸せだな。
言葉では表現しきれないほどの幸せに胸をいっぱいに満たされながら、彼の頬に手を添え、頭を撫で、額に口づけを落とす。
なんの変哲もない、ある意味順風満帆な人生だったと思う。
それでも、嫌われないように、誰かの邪魔をしないようにと思いながら生きる日々の中で、どこか空虚を抱えていた。
しかし彼と出会ったことで東弥の人生は大きく変わった。
幸せとは言い難い出会いだったが、それでも守りたいと思う存在が自分を必要としてくれたことが嬉しくて。
寄り添ううちに彼が東弥自身を見てくれるようになって、好きだと言う気持ちを受け入れてくれて。
そうして自分といるようになってから彼は次第にいろいろなこと覚え、今ではもうただそばにいるだけで、否、そばにいなくても東弥のことを魅了する。
“きっと彼は、東弥にも大切な存在になると思います。”
ふと、西弥からの最後の手紙に書かれていたフレーズを思い出した。
__…うん、兄さん。大切な存在ができたよ。
「おはよう、東弥さん。」
いつのまにか目を覚ましていた静留がにっこりと笑い、少し掠れた高い声で囀る。
「おはよう、静留。身体は大丈夫?」
「うん。…あれ、リボン…あっ…。」
彼は不思議そうに頷いたあとでいつものようにリボンを探し始めたが、すぐに首元のcollarに気がつき花開くように柔らかく笑んだ。
その仕草があまりにも可愛らしくてたまらず彼に口づければ、濡れ羽色の瞳が大きく見開かれ白い頬がほの赤く染まる。
「朝ごはん、なににする?」
「んー…えっと…、東弥さんがすきなもの!」
動揺しながら静留が紡いだ答えの主語は、相変わらず東弥だ。
もっとわがままを言ってくれてもいいのに。
でも、東弥のことを考えてくれる今の静留も、きっとわがままを言うようになってくれるいつかの静留も、東弥はどちらもたまらなく愛しく思うのだろう。
__こんな日々がずっと続きますように。
願いながら彼の身体をお姫様抱っこの形で持ち上げる。
とんとんと階段を下りピアノの椅子に彼を降ろせば、泣きそうなくらい幸せな音色を彼の指が奏で始め、またこの瞬間も東弥の心をいっぱいに満たしていった。
〜Fine〜
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