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「おかえりなさい、東弥さん!」
玄関には静留が立っていて、東弥を目にすると幸せそうにふわりと笑んだ。
いつものように抱きしめようと手を伸ばしかけた東弥は、彼の格好を見て思わず固まる。
目の前の静留はなぜか髪を二つに結んでおり、ピンク色の可愛らしいエプロンを纏っていた。
さらさらの髪が2つに結われて、すっと伸びた白い首筋が覗いているからひどく色っぽいのに、さらにうさぎ柄のピンク色のエプロンを纏い、“抱っこ”、とでもいうようにあどけなく両手を伸ばされたら、もうたまらない。
心なしか彼からチョコレートのような甘い香りまで漂っている気がする。
「…ただいま、しない…?」
しばらく動かないでいると、静留が悲しそうに眉を顰め首を傾げた。
「ごめん、あんまり静留が可愛いから。」
正直に伝え、甘いglareを放ちながら白い頬を手のひらで撫でる。
静留はなぜか耳まで真っ赤にして東弥の胸に顔を埋めてしまった。
しっかりと晒された綺麗なうなじが、またたまらなく愛しい。
collarの下の弱い部分をそっと指でなぞってやれば、“んっ… ”、と色を帯びた高い声が響く。
その途端、何か物の落ちる音がした。
「…あの、お邪魔しました…。」
音の方を見れば、幹斗が決まり悪そうに笑っている。
「幹斗さん!!」
謎の気まずい空気に構わず静留は声を上げ、幹斗の方を振り返った。
「…えっと、これ。あげるんでしょう?」
幹斗が先程落ちた箱を静留に差し出す。
「そうだった!」
静留は思い出したようにそう言って、受け取ったそれを東弥に差し出した。
「あのね、東弥さん、えっと、…ホワイトデー、作ったの。いつもやさしくしてくれて、ありがとう。」
オニキスの瞳が、様子を伺うように上目遣いでじっと東弥の瞳を除く。
__…じゃあ、幹斗のところに来たのは相談や愚痴じゃなくてホワイトデーを作るためだったのか…。
可愛すぎてどうしようかと悩んでいたら、考える前に再び静留を抱きしめていた。
匂いも声も顔も肌も全てが彼は甘く、今すぐにでも食べてしまいたい。
「静留、帰ったら抱いていい?抱きしめるって意味じゃないよ。わかる?」
幹斗に聞こえないように耳元で小さく囁けば、驚くように大きく開かれた彼の瞳がわずかに潤み、真っ赤な顔が無言で頷いた。
「ありがとう。嬉しいよ。」
「ぅー…。」
静留がエプロンをしたまま中の服だけ剥がされ足腰立たなくなるまで抱かれるのは、そう遠くない未来である。
ハッピーホワイトデー。
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