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冬のおたのしみ
※寒すぎてお布団から出られなかったある朝の作者の走り書きです。
※オチもヤマもR18もない安定の甘い2人です笑
「ぅー、つめたい…。」
冬の夜である。
東弥の部屋に入り恐る恐る布団に足を入れた静留は、肌を襲うあまりの冷たさに瞳を潤ませた。
布団は冷たいし、朝一の鍵盤は冷たくて指が思うように動かないし、寒さに弱い静留はあまり冬が得意ではない。
それでも、大好きな人と過ごす冬にはたくさんの幸せも眠っている。
例えば……。
「静留……?」
静留の体温でやっとベッドが温もった頃、ドアが開いて最愛の恋人が入ってきた。
顔だけを出して掛け布団の中で丸くなっている静留を見つけた彼は、切れ長の瞳を優しく細めて太陽みたいに笑う。
「東弥さん!!」
静留は彼に抱きつきたい一心で、寒さなど忘れてぴょん、と布団から飛び降りた。
ようやく温まった肌が突然外気に晒され、身震いしそうになる。
しかし彼の元まで辿り着けば彼の体温はとても温かく、世界中のどんな場所よりも安心できるその優しい腕の中で、静留は彼の胸板にそっと頬を寄せた。
お風呂上がりなせいかいつもより強い香りに、心臓の奥が疼く。
同じシャンプーとボディーソープを使っているはずなのに、何故だか東弥の香りは静留と同じにならない。
大きな不思議だ。
しばらくその温もりに身体を預けていると、突然身体が宙に浮いて。
「わっ!!」
びっくりしてぱちぱちと目を瞬かせる静留の反応を、東弥はくすぐったそうに笑う。
お姫様抱っこの形になっているため、顔がとても近い。
既に疼き始めていた静留の心臓は、とうとう速いリズムを刻み始めた。
__…ほっぺ、あついよ……。
きっと真っ赤になっているであろう自分の顔が恥ずかしくて、いっそ見られないように俯こうとしたけれど、その前に甘いglareを放たれたから、目が逸らせなくなってしまう。
「お布団、温めてくれていたの?」
キャラメルみたいな微笑みと共に優しく問いかけられた。
「う、うん。」
「ありがとう、静留。寒いのに、俺のために頑張ってくれたんだね。大好きだよ。」
まだ温もりの残る布団の上にそっと降ろされて、それから優しく額に口付けを落とされる。
彼の顔を仰げば、再び甘いglareのご褒美が与えられた。
これは、冬限定の、それも別々にお風呂に入った日にだけ訪れる静留の幸せだ。
布団の冷たさの代わりに、彼の笑顔と、甘いglareと、ありがとうの言葉をもらうことができる。
そして、そのあと東弥に一晩中抱きしめられながら寝られることも、静留は大好きでたまらないのだった。
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