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夏のss
※作者の頭が暑さで溶けたため偏差値が最底辺なお話です※
※殴り書きです。ご注意ください(>人<;)※
(幹斗side)
「何見てんの?」
「!?」
学部生活も残りわずかとなった4年生の秋。誰もいない学生控室で動画を見ながらお弁当を食べていた幹斗は、突然後ろから肩を掴まれてぴくりと身体を跳ねさせた。
イヤホンを外し振り返ると、意地悪く笑った谷津の姿がある。
「…谷津か…。」
盛大なため息と共に、力が抜けた。まあ、突然肩を掴んでくる学生など谷津しかいないのだけれど。
「なになに?そんな顔するほど後ろめた…猫じゃん!かわいいー!あっ、マキちゃんのがかわいいけど!」
そんな彼は悪びれもせずに幹斗のスマホを覗き、さらにほぼ脈絡なしに惚気ると言う器用なことをしてみせた。
「人のもの勝手に覗くのはプライバシーの侵害だと思うけど…かわいいよね。それは認める。」
「うん、かわいい。おすすめは?」
怒る気も湧いてこなくて苦笑混じりに言えば、谷津は目を輝かせながらおすすめの動画を聞いてくる。本当に猫が好きらしい。
幹斗はざっと動画のおすすめ欄をスクロールし、最近のお気に入りを見せた。
「えっと…これかな」
“夏バテは猫吸いで解決!”、というタイトルの動画である。
「なになに?猫吸い?」
「うん。猫のお腹に顔を埋めて深呼吸するんだって。一説によると1日の疲れ全部吹っ飛ぶらしいよ。」
「まじか!…あっ、東弥だ!東弥おはよー!」
説明していると谷津が何かに気づいたようにスマホから顔を上げた。
その視線の先に、コンビニの袋を持った東弥がいる。
相変わらずのモデル体型と芸能人でもおかしくない顔立ちをした彼には、コンビニの袋はあまり似合わない。
“由良さんの次に似合わないな”、なんて、心の中でとはいえ谷津レベルの惚気をしてしまったことは、墓場まで持っていく秘密である。
「おっ、幹斗…と、ついでに谷津。」
気づいたらしい東弥が、さらっとジョークを混ぜながら爽やかに笑って、こちらに歩いてきた。
「えっ、今すっごいひどい言葉聞こえた!挨拶したの俺なんだけど!!東弥もお昼?」
「うん。2人は?何話してたの?」
「えっと、幹斗の猫のおすすめの動画の話!猫吸いだっけ??」
「…う、うん…。」
谷津に話を振られ、幹斗は少し視線を泳がせながら相槌を打った。
“猫のおすすめの動画は?”、と聞かれて答えるのと、そのことに触れられていないのに“猫のこの動画が好きです”、と言うのは全く違って、後者はだいぶ恥ずかしい。
「猫吸い?」
東弥がこちらを見て聞いてきたが、流石にこれ以上答えるのは恥ずかしくて谷津の太腿を少しつねろうとすると、それに気づいた谷津が慌てて口を開いた。
「えっとね、猫のお腹に顔を埋めて深呼吸することらしい!めっちゃ癒されるらしい…あっ、そうだ!静留君って猫っぽいし、東弥は静留君のお腹でも吸えばいいんじゃない!?」
なぜか一言多かった気がするが、もう慣れているので幹斗は気にしないことにする。
「静留のお腹に、顔を?見てるだけでかわいいのに、谷津天才?」
しかし東弥はなぜかその多かった一言をかなり真剣な面持ちで繰り返した。
「そうそう!俺天才なんだ!!いい提案でしょ!?」
「うん。すごくいいと思う。」
呆れ顔で2人を傍観しながら、そういえばこのモデル顔負けのイケメンは恋人のこととなるとかなり残念に成り下がることを思い出す。
ツッコむ機会を失った幹斗は、後日それを由良にネタとして話し、“僕も幹斗君のお腹に同じことしたいな。”、と予想外の反応をされる羽目になったのだった。
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