1. second season

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1. second season

ハァーハァーハァー… 古い雑居ビルの隙間を走りつ続けていた。 止まるわけにはいかない。 早く智を捜しださないといけないっ。 以前、アイツらをここらへんで見かけたと情報は握っていたが、新しいアジトの場所は確定できないでいた。 「くそっ。」 ここらへんに違いないのに… 『社長! 松井も富田も足取りがつかめないそうですっ。』 後を付いてくる大倉が叫んだ。 智が姿を消したのと同時に、アイツらも雲隠れしていた。 思った通り、やっぱり アイツらが… ぐるりと建物を見渡す。 一つ一つ当たるか…? それにしたって何か目星があれば… 少し広い通りに出てきたが、繁華街の裏は人の姿が目っきり減っていた。 車がすきまなく路上に並び、一層、通りを狭くしていた。 バリンッ、 不意に頭上で、ガラスの割れるような音がした… その刹那、 ドンッ、 落下した物がしたたかに打ち付けられた様な鈍い音が、あたりに響いた。 体をかばっていると、すぐさまけたたましい音が続いてキラキラと地面に降り注ぐ。 シーンと静まり返ってようやく警戒を解くことが出来た。 見ると、路上に窓ガラスらしき残骸が散乱していた。 すぐさま大きな音がした車に駆け寄り、天板に落ちてきた物体を確認しようと上を見上げた。 ビルの窓から男たちが数人慌てたように下を見下ろしていた。 <やべぇ!> 慌てた様子。 いかにもガラの悪い… アイツらかっ! 急いでビルの壁の段差に足を掛け登り、車の屋根に降ってきた物を確認する。 「智っ!!」 『智さんっ!』 白いガウンはところどころ血が染みついていていた。 のぞいた腕には至る所にうっ血の跡。 そして… 自然と顔が歪む。 よくもっ! 貴方に こんなこと! くそっ、 だが、そんな感傷に囚われている暇などない。 慎重にガラスをよけながら貴方を引き寄せる。 そのまま抱え上げると、大倉が横づけた車の後部座席へと乗り込んだ。 すぐさま車は走り出し、懇意にしている病院へと向かう。 誰か人がいたようだから、もしかしたら写メでも取られたかもしれない。 警察に連絡がいったりしたら厄介だった。 『社長、医院長に連絡を…。』 「ああ、わかってる。」 先に電話して裏口から入れて貰おう。 とにかく、貴方を見つける事が出来て良かった。 携帯を取り出しながら、ふと気になって智の鼻の下あたりに指をあてる。 …? 「智…?」 肌蹴た胸に直接耳を当てたが、何の音も振動も伝わってこなかった。 え… うそ…だろ…そんなバカな… 「智っ、智っ!」 意識のない顔は信じられないくらい白く血の気が無い。 そんなバカな… 生きていてくれれば、それだけで良かったのに… 違う… 貴方と幸せになりたいって思った。 それに… 智は俺を愛してくれた。 俺と一緒にやり直したいんだって、そう言っていたのに… … 頭がグラグラと回り始める。 意識が混濁する。 ないかがおかしかった。 … … 『…ん、ねぇ。』 …? 『優、優っ!』 智…? 『優、大丈夫? 風邪ひくから、ベッド行って。』 その声に瞼を開けると、俺はソファーの上だった。 うたた寝していたらし俺を、心配そうに智が覗きこんでいた。 慌てて瞬きを繰り返す。 見れば自宅のリビングだった。 『優、うなされてたよ。』 「…。」 まだ、頭がぼんやりとしていた。 『大丈夫…?』 うなされて…… ああ…そうだった。 嫌な事を思い出していた。 あんな夢… 本当に智を失くしたかと思って絶望に落とされていた。 でも…夢だ。 夢で良かったと、ホッと胸をなでおろしていた。
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