お嫁様の知らない夫婦の話合い1

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お嫁様の知らない夫婦の話合い1

 目の前のお医者様は唸りながら頭を悩ませている。  王宮について直ぐに王子に手配されたお医者様だ。 「特に目立った症状は無いので、人目を憚らず泣き出したい程の具合の悪さという事でしたら、精神的なものと思われます。心当たりは?」 「も、もう大丈夫です。 本当に…お医者様に診ていただく程ではないのです。」  もじもじしながは言うマーガレットの様子を見て、医師は何かを察した。 「お年頃にはありがちな事です。心配はいりませんよ。恋煩いからくる胸の痛みと言うのは時が解決致します。 そう言う時は、気分転換になる別の事をしてみても良いかもしれません。」  真面目にアドバイスを貰ってしまい、益々いたたまれなくなってきた。 (分かっているからもうやめて。)  「では、本日はこれにて失礼させていただきます。 お身体には心配が無いことを王子に伝えて参りますので、お妃様はごゆるりとなさってください。」 ーパタン  扉を閉じる音がして医者が出て行くと、やっと1人になれた事で息を吐き、戸棚の方へと足を運んだ。  戸棚の横にある壁の一角をを人差し指で押すと、何の変哲も無かった壁のほんの一部が加えられた圧力で180度反転し、小さい鍵が2つ姿を表した。  マーガレットは、その鍵を1つだけ手に持ち、本棚に並べられた本を取り出すと奥には小さな鍵穴があり、鍵の一つでそれを開けた。  中から出てきた箱に、手を伸ばして手元まで持ってくると、棚と壁は元あった状態に戻り、本を棚に戻してから箱を抱えて机まで持っていくと、箱をそっと置いた。  この箱はマーガレットの秘密にしていた宝箱。  結婚する前に幼い私の言い分に耳を傾けてくれた王から賜った一枚の用紙。玉璽の押された離縁状が入っている。 (これを使う日が近付いているのよね…。 王子は、いつ話を切り出してくるかしら。薔薇園でのイベントがあったとするなら、すぐよね。) 「マーガレット」 「!?クリス殿下、公務に行かれたのでは?」 「それは大丈夫だよもう終わったから。」 「え、ですが確かその後、ご予定は確か今度隣国視察団をお迎えする為の…」 「それも、もう終わってるよ。 そんな事よりマーガレットに大事な話があるんだ。」   (…ー!) 「?その箱は何?僕の見た事ない箱だね。」  机に置いてある箱を見て問いかけられた。  マーガレットは静かに答える。 「これは、結婚した当初陛下から賜った物なんです。」 (ぁあ、とうとう、この時が来てしまったのだわ。) 「へぇ、父上から…。」 寂しそうにしている王子に、切ない気持ちが込み上げる。  私との離縁を申し出ることに、少しは惜しんで寂しさを感じてくれているのかしら…でも、このままではいけないのよね。  王子、貴方は前に進まなければ。  貴方はこの物語の主役なのだから。 「クリス殿下、大事なお話があるのですよね?」 「ぁあそうそう。大事な話があるんだ。だからね、マーガレット。」 「はい。」 「まずはドレスを脱いでくれる?」 「……は…え?」 「それとも、僕が脱がせる?」  悪意のない純粋無垢な顔をしている天使を前にして、私は私の天使の言葉を把握するのに時間を要した。
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