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番外編 第3子ビオラは溺愛されて嫁げないかもしれない
これは物語の後の物語ー…
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セレナイト国王 クリス・ウェルナンシアには3人の子供が居る。
第1王子ルイシスはマーガレット王妃と同じ色合いだが、その目の形やパーツは所々国王のものと同じだった。
性格はこれまた2人を足して2で割った感じだ。妹と弟どちらの面倒見も良いが、特に妹を溺愛している。
第2王子ミハイルは見た目も中身も国王陛下の子供の頃と良く似ている。
見た目のザ、物語の王子様その物の容貌のせいで追いかけてくる令嬢は数多く居るが、取り付く隙がない。だと言うのに妹への溺愛が過ぎる。むしろ重い。
そして、クリスとマーガレットの第3子ビオラ姫は王妃に見た目も中身も似ていた。
当然国王は溺愛して、周りの臣下が持ってくる縁談話は全て満面の笑顔で却下していた。
最近隣国の縁談話も来ているが、それも無くなってしまいそうだと言う話だ。
(もしかしたら、私はこの先ずっと嫁げないかもしれないわ。)
15歳になったビオラは、華園の近くにある川辺で、水に足を浸しながらぼんやりとそう思った。
最近その事に気が付いてきたのだ。
(お父様も、お母様も、ルイシス兄様も、ミハイル兄様も大好きだから。皆の側にずっといられるのなら、それで良いと、前は思っていたけれど…
最近お友達の令嬢達の話を聞いていたら、少し、恋もしてみたいと思ったりもするのよね…)
隣国から縁談の話が来た時、流石に外交的にも良い話だったから少しだけ期待した。
会った事もないけれど、隣国王子は令嬢達にも大人気だ。そんな方と恋が出来たなら、どんなに良いだろうかと思う。
ちょっぴり期待したぶん、少し残念に思う気持ちがあって、言ってみれば少し落ち込んでいる。
(…私ったら、贅沢ね。)
国は平和で、政略結婚もさほど必要無いからこそ出来ることだ。
(だと言うのに、残念だなんて、バチが当たるわ…。)
足をちゃぷちゃぷとバタつかせてみたとき、茂みの方で音がした。
(川辺に誰か来るなんて思わなかったわ。私ったら今はしたない格好をー…)
慌てて足を拭こうとタオルを手にした瞬間、手が滑って川の中にタオルが落ちてしまった。
予想外のことで困っていると、後ろから声をかけられる。
「如何なさいましたか?」
声に反応して振り返ってみると、そこには精錬な雰囲気でペリドットの瞳をした青年が立っていた。
足を晒している姿の自分が恥ずかしくて、濡れたままの足を衣服の裾で隠そうとすると、青年は思わずビオラの手を掴んでそれを止めた。
「すみません。このままでは衣服が濡れてしまうと思い…」
「い、いえ。ですがあまりその…見ないでいただけると…。」
「!すみません!あの、でも宜しければ、わたしのハンカチをお使いください!」
差し出されたハンカチには紋章が刺繍されているおり、必死の様子の青年に思わずビオラは笑みを浮かべて受け取った。
「ありがとう。使わせていただくわね。」
「……!」
その笑顔に、ぼっと頬を朱らめ視線を背けた青年を不思議に思った。
そして足を拭き終わり靴を履く。借りたハンカチはすっかり足の水を吸収して濡れていた。
「このハンカチを洗ってからお返ししてもよろしいですか?それと新しいものをー…」
「いえ、それは姫に差し上げます。」
「…こんな格好をして、足を晒していたと言うのに…私が何者か知っていたのですね。」
(村娘のような格好で、髪を三つ編みに結えているので、話をした事の無い人は姫だと分からない者もいるのだけど.
こんなところを見られて、姫とバレているなんて…)
「わたしは貴方の護衛騎士ですから。」
「私の?」
「はい。貴方は国王陛下や王子達に過剰に愛されているが故に、…危険も、高いですから。この度専属の護衛として貴方の騎士となりました。」
「そうだったの…。まだ私とそんなに歳も違わないのに、お父様に認められるなんて。貴方はきっと凄い方なのね。」
「いいえ、凄いのはわたしを此処に呼び寄せた姫ですよ。」
「……?」
「ー・姫、御手を。」
促されて、思わず右手を出すと、片膝をついた騎士は、その手の甲に、そっと口付けをした。
「 …!」
「ここに、我が忠誠を誓います。わたしの姫。」
その時、髪が緩やかな風に揺らされているように、ビオラの心が大きく揺れる気配がする。
見抜いているのか、いないのか、涼し気な表情をしたペリドットの瞳が、そんなビオラを見据えるものだから。
この時余計に、ビオラの心臓は高鳴った。
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