第14話 到着2日目・昼その5

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第14話 到着2日目・昼その5

961fdead-80b7-41e6-929f-63645bd3883e  私たちは昨夜のアリバイを確かめることにした。  殺人のあった時刻ではなく、人狼と思われる獣がこの館『或雪山山荘』に侵入したと思しき時刻のアリバイだ。  夕食の時間はみんなが顔を合わせた最後の時間だった……つまりみんながそろっていたのだから……。  その夕食の時間以降で、23時の管理人のカンさんが戸締まりの見回りに行った時刻までの間の時間帯のアリバイを確かめる必要があるのですね。  「えっと……たしか夕食は午後8時半くらいに解散したのではありませんでしたか?」  「そうだな。僕もあの時、時間を何度も確かめていたからよく覚えている。正確にはお開きの声がかかったのは20時34分だな。」  「コンジ先生……。よく正確に覚えていますね?」  「そりゃあな。実につまらん時間だったからな。早く終わらないかと何度も時計を確認していたからな。」  「それ……。なんと言っていいか、わかりませんよぉ!」  ジェニー警視も援護射撃をする。  「まあまあ。名探偵殿は昨夜は話しかけられてばっかりだったからなぁ。その気持ちはわかるよ。」  いやいやいや……。それに答えていたのはほとんど私でしたけどね……?  まあ、そこは今は関係ないか。  つまり、20時34分……えーい、20時半でいいよね? その20時半以降で、見回りの時間23時までの間というわけですね。  「じゃあ、その20時34分以降のアリバイってわけだな? キノノウ氏よ。」  「そういうことだな。ジェニー警視。」  なんだか息が合ってきたように見えるのは私だけでしょうか……。  「僕は夕食の後、すぐにシャワーを浴びに行ったんだよ。その時、エラリーンさんと浴場の前で会ったぞ? 彼女もシャワーを浴びに来ていたようだったな。」  「ああ。そうなんですよ。女性は滞在客から先にみんなで順番に入るようにって、ママハッハさんが言ってくださって……たしかエラリーンさんが一番に名乗りをあげたんですよ。」  「なるほどな。僕も一番じゃないと嫌なんだよな。おおかたエラリーン夫人もそんなところだろうな。」  「あ! その後、私がエラリーンさんの後にシャワーを浴びさせてもらったぞ? 夕食後はいったん自室に戻ったが、2番手でシャワーの予定だったからな。あれは、たしか……21時くらいかな?」  ジェニー警視がそう証言してくれた。  「そうでしたね。エラリーン夫人、ジェニー警視、そして私ジョシュアの順に入らせて頂いたんですよね。私がシャワーをした後は、執事のシープさんにお声がけしておいたのでシンデレイラ家の女性陣がシャワーを浴びたと思いますよ?」  私も補足した。  「そうだったな。君は僕がシャワーから戻った時、僕の部屋で片付けしていたな。その後、たしか……。21時25分、シャワーしてくると言って部屋からいなくなってたもんな。」  「そうです。あの時、そろそろ時間かなって思ってシャワールームに向かったんです。ちょうどジェニー警視が出てきたところでお会いしましたよね?」  「ああ。呼びに行く手間が省けて助かったよ。私はそれから3階の遊戯室に行ったよ。そこにアイティさんと、ジニアスがビリヤードしていたんだ。あ、ドクター・シュジイもいたから一緒にチェスをやって遊んでたんだよ。」  「アレクサンダー神父は夕食の後、どうしてたんだ?」  コンジ先生がここまでじっと聞いていた神父さんに質問をした。  「オオ。ワタシはお祈りに行きましたよ? シープさんに『左翼の塔』の扉を開けてもらって、あなたがたも見たあの5階で朝まで祈祷をしていマーシタ!」  「そうか……。それが間違いないなら神父はアリバイ成立だな。」  コンジ先生があっさり神父さんのアリバイを認めた。  えっと……、本当かなぁ? だってずっと一人でいたってアリバイにならないじゃあないですか!?  「ええ……? コンジ先生? アレクサンダー神父はずっと一人でいたんですよね? それじゃあアリバイにならないのじゃあないですか?」  「ああ。ジョシュア。君は忘れたのかい? あの『左翼の塔』の扉が内側からは鍵がかかっていると開けられないことを……。」  「あ! ……そうでした。じゃあ、シープさんが鍵を外からかけたと証言されれば神父さんは!?」  「そうだよ。アリバイ成立だ。」  「それは私が確かに証言致します。アレクサンダー神父が『左翼の塔』に入った後、その扉の鍵を外側から、間違いなくおかけいたしました。」  シープさんがそう証言した。  「その後、開けたのは?」  「はい。今日の朝、みなさまをダイニングルームにお呼びしに行った際、私がアレクサンダー神父もお呼びさせていただきましたので、その際、たしかに『左翼の塔』の1階扉の鍵はかかっておりました。間違いございません。」  「ハハハ。そんなこと確認しなくてもワタシは神の使徒デスヨ? 悪魔の獣の訳がありマセン!」  アレクサンダー神父は自信満々に答えた。  「なるほど。アレクサンダー神父が現在、人狼が化けているという可能性はないと判断しても良さそうだな。」  慎重なコンジ先生が判断をしたのだ。間違いないでしょうね。  「では、シンデレイラ家の女性陣の皆様方のシャワーの順ですが、ジョシュア様からシャワーを終えられたとお聞きしました私は、その後、ママハッハ様にシャワーをお浴びするようお知らせしてまいりました。おそらく時間は……22時でしたね。途中、3階廊下でメッシュと会いましたよ。遊戯室でお遊びのみなさまにワインとおつまみをお持ちするところだと言ってましたね。」  「ああ。それは私も知っているよ。ジニアスがシャワーを浴びると言って遊戯室を出て、私は残ったアイティとビリヤードの勝負をしていたよ。アイティがワインをほしいとメッシュに伝えていたからな。21時と22時の2回、ワインボトルを数本アイスバケツに入れて持ってきてくれたよ。」  「そうでしたか。22時の時、私がメッシュと会ったのですね。その後、私は自室にいましたが、ママハッハ様がシャワーを終えられた22時半ごろ、お声がけしていただきましたので、今度はアネノ様の部屋にシャワーのお時間をお知らせに参りました。部屋にはアネノ様とジジョーノ様のお二人がいらっしゃいました。アネノ様、ジジョーノ様の順でシャワーをお浴びになられました。」  「それは間違いないのかい?」  コンジ先生がシープさんに確認する。  「はい。実は……、ジジョーノ様が私にご相談がおありだとおっしゃったので、アネノ様がシャワーに行かれた後、しばらくお話をお聞きしておりましもので。アネノ様がシャワーを終えられた後ジジョーノ様にお声がけしてシャワーに行かれたということになります。」  「ふむ。なるほど。」  「シープさん。私がお声がけしに行った時、パパデスさんの部屋から出てきたところでしたね?」  「はい。シュジイがパパデス様の22時の診察の時間ということでパパデス様の部屋にやってまいりましたので、打ち合わせを終えさせて頂き、おいとまさせていただきました。」  「そして、その後は、キッチンでメッシュと話をしながら、少し晩酌させて頂きまして、自室に戻って休ませて頂きました。」  「ああ。シープさんは23時の見回りの際、キッチンでメッシュと一緒にいるところを見ましたよ。」  カンさんもシープさんのアリバイを補足する。  「カンさんはどうしてたんですか?」  私は質問する。  「はい。夕食の後は、メッシュと後片付けをしまして、主にキッチンにいました。途中2回メッシュがワインを遊戯室に運びに抜けましたが……。22時に警備室に行き、チェックをしておりまして、その後、23時に戸締まりと見回りに行きました。そして、戻ったら先にメッシュがシャワーを浴びてましたので、私もシャワーを頂いてから休ませてもらいました。」  「ふむ。ここのメンバーはあらかた動きがわかったな。すべて把握したよ。」  コンジ先生はその頭の中で今聞いたすべてのことをまるで映写機で記録したかのように、動きまで再現できるのです。  「あ! じゃあ、私、他の人の行動を聞いてきますね?」  「そうだな。じゃあ、手分けして確認していこうか。」  「はい。先生!」  ~続く~
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