美肌マシン

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 4月の初め、家々は寒いから窓を閉めているが家の中に居る人の声は案外、外に漏れるものだ。特に窓側じゃなく廊下側なら換気のために少し窓を開けている。だから廊下に居る人に中にいる人の会話は聞こえてしまう。ここ三納マンションも例外じゃない。いつも廊下を通る人がマンションの中から聞こえる声を訝しげに聞きながら通る。  ここは群馬県の高崎駅からバスで15分くらい走ったところにある15階建てマンションの3階、造りは2LDKの家族向けだ。そのマンションの中から話し声が聞こえる。皆んな比較的若い声だ。20代、いってっても30代半ばくらいだろう。男の人は威圧的に話す。 「綺麗になりたいんだったら、俺に任せろ。今日は新しいマシンを用意している。リュックが重くて閉口したんだが、皆んなの美肌のために重い思いをして持って来た。試してみたい人は順番だ。分かったな」  硝子越しに見える影の様子から男の人はそう言ってリュックの中から色々な機械を取り出しているようだ。 「いつもすみません。そうだね、私、この道具があるから美肌を保てるの」 「私も、私も、だから最近、告られたばっか」 「えー。告られたの?私なんかダメ。高校生の時以来、男の人と付き合ったことない。だから自信をつけるためにここにきてるの」 「えー、そうなの?私なんか肌の調子が良くなり始めてすぐに付き合いを申し込まれたけど。しかも会社の上司だよ」  声の感じからして女の人は4、5人いるだろうか。和気あいあいと楽しそうだ。
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