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えーと、はじめまして……ですよね? すみません、人間は皆さん顔貌がそっくりで、私にはなかなか見分けがつかなくて。少し前まではかろうじて性別は判別できたのですが、今ではそれすらも。ほら、男性も髪を伸ばしたり化粧を施したりする時代でしょう? 女性だって体を鍛えたり髪を刈り上げたりしている人もいるわけですからね――我々妖怪のようにあなた様とは違う世界の住民には、なかなか難しいのですよ。
申し遅れました。見ての通り私は鬼でございます。一本角に赤い肌、虎の皮の腰布に大きな体。これはもうあなた様が見ても、他の誰かが見ても、紛れもない鬼でありましょう。私のチャームポイントは、三白眼っていうのですか? それとも四白眼でしょうかね? とにかく黒目がとても小さく、力強いこの目なのですが、そこはあまり人間の皆さんは興味がないようで――。
ところで、あなた様は『鬼』についてどう思われますか? 今まで幾人かの人間にお聞きしたのですが、異口同音で。『恐ろしい』やら『極悪非道』やら。おそらくあなた様も同じようなことをおっしゃると思います。まぁ、そのような概念を妖怪化させた存在なのですから、当たり前といえば当たり前なのですがね。少し寂しい気もするのですよ。私自身、悪事を働いたことは一度もないですし、しようと思ったことすらありません。信じていただけますか? 信じていただけないでしょうね。このような見た目ですから。
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