妖怪会議

鬼に金棒？

　ところで、鬼に金棒という言葉はご存じですか？　強いものがより一層強くなるという意味だとか。最強ということでしょうかね。
　私はね、この鬼に金棒という言葉に異議があるんです。聞いてくださいますか？　この鬼の愚痴を。

　人間の皆さんは鬼がみんな強いものだと信じておりますが、実は例外もおりましてね。その例外が私なのですけれども、本当に見かけ倒しで。これからお話しすることは人間にとって少し難しい内容になるかもしれないのですが、聞いていただきたい。
　少し前にちらっと、概念が妖怪化したとお話ししましたよね。概念とは簡単に言いますと、共通認識のことです。皆さんが共通して持っている認識――ということですね。
　例えば、｢花とは赤いバラのことだ｣と言っても、赤色ではない花もありますし、花と聞いて、バラではなくタンポポや桜を思い浮かべる人もいるでしょう。だからこの場合は共通認識とはいえないので、概念ではありません。
　では、｢赤いバラは花である｣と言えばどうでしょうか。赤いバラが花であることに異論を唱える人はいないと思われます。
　このような、皆さんが共通して持っている認識を概念といいます。
　そして妖怪は概念が形になった存在ですから、鬼はすべて同じような姿で、同じような属性を持っているわけです。
　しかし、共通認識とはいっても皆さん微妙に――本当に微妙ではあるのですけれども、異なるわけですよ。