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この数はもちろん前後しますよ。一人の人間が新たに輪入道様を知ると、輪入道様も一匹増えますし、輪入道様のことを知っている人間が一人いなくなると――つまり亡くなってしまうと、輪入道様も一匹減ってしまいます。
我々妖怪は人間の概念が――稀に観念になるのですが――ないと、生まれもしないし、生きてもゆけない。非常に儚い存在なのです。
ちなみに先ほどの輪入道様のお話しですが、あくまで例えでございます。もう完全なるフィクション。例え話であったとしても輪入道様を知っている人間が百人なんて少なすぎて、輪入道様に知られたら私、怒られてしまいます。あの怖い顔で怒られてしまったら私、もう三日三晩泣き続けることになるでしょう。お願いですから、輪入道様にはこの例え話は内緒にしていてください。口止め料はお支払いできませんが、どうぞ内密に。
そういうことでございまして、自分で言うのも少し恥ずかしいのですが――私のように知名度の高い妖怪、鬼ですと人間の皆さんと同じくらいの数が存在します。
私は運悪く、共通認識とはほど遠い認識を持つ人間から生み出されてしまったようで……。
鬼のくせに力は弱いし、極悪非道なんてとんでもない。驚かせてしまっては可哀想だと思い、後ろから肩をたたいて呼ぶことすらできない気の小さな鬼ですよ。
私が金棒を与えられたところで、他の鬼の拳には到底かないません。それどころか人間の皆さんにすら太刀打ちできないかもしれません。そのくらい私は非力なのですよ。
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