鬼に金棒?

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 いや、あなた様はいい人ですよ。何か言いたいことのひとつやふたつあるはずなのに、こうして文句も言わずに私の愚痴を聞いてくださるのですから。あなた様のような人間が多数派ならば、私もこの世界に移住したいのですがね、残念ながら今のこの世界では私は恐れられて、見世物にされて、研究という名目のもと切り刻まれてしまいそうですから。考えるだけでも青鬼になってしまいそうですよ。  また話しの方向がズレてしまいましたね、いや、申し訳ない。話しを戻しますね。  節分って「鬼は外、福は内」って言いながら豆を投げるんですよね?  私はね、はじめから外にいるのですよ。だって私が内に入れば皆さん恐れるでしょう。逃げるでしょう。追い出すでしょう。我々鬼はずっと外におりますよ。 ……この言い方は正しくないのかもしれませんね。言い直します。少なくとも私が見てきたすべての鬼は内へは入りません。外におります。もしかしたら内に入りたがる変わり者が存在するのかもしれませんが、私は聞いたことがないですね。ですから鬼は外なんて言われても一体何処へ行けばいいのやら。  今ふと思ったのですが、この場合の鬼はもしかすると本物の鬼ではなく、人間の悪しき心という意味でしょうかね。福は、家や中ではなく内ですし。それならばまだ納得できますが、悪しき心を鬼として形容されてしまうのは、やはり快いものではありませんね。
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