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「私はきっと、獄死する運命です。それほどのことをしたのですから、今更嘆くつもりはありません。この日々を償いとしつつ、最期の日を待ちます。しかし、私という肉親の存在は、きっと迷惑になる。だからもう、私という父親はずっと昔に死んだと思ってほしい。それが一番良いことです」
僕は途中から書けなくなりました。息子の記憶から自ら消えようとする倉田さんが哀れで、同時に慎一さんの気持ちに配慮のない言葉にも微かな憤りを感じています。
この手紙は、倉田さんも慎一さんも、それぞれの立場で読むことになるでしょう。しかし倉田さんの言葉は、文字にするにはあまりに悲しいです。読み手たちを傷つけるとわかってしまうと、それ以上文字を書くことはできません。
「聞き取れませんでしたか?」
倉田さんに呼びかけられながら、僕は首を振りました。
「僕にはもう書けないです」
倉田さんは呆気にとられたように、口を半開きにして僕を見つめ返します。当然でしょう。代筆を命じられた者としてあるまじき言動です。ペンやワープロがそれぞれの方法で文章の執筆を拒否したら、誰だって絶句するはずです。
「いや、何を言ってるんですか」
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