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倉田さんはあっさり僕を見限りました。僕は倉田さんの友人ではなく、手の代わりをしていたにすぎません。意志が通じない手など厄介なだけでしょう。
「一七一五番、終了だ」
そして外から看守が呼びかけてきました。命令されるまま外へ出ますが、僕は何故か後ろ髪引かれる思いがしました。
「忘れられるわけないと思いますよ」
口を衝いて出た言葉は、
「一七一五番、無駄口を叩くな」
看守の叱声に打ち消されました。
倉田さんは廊下に背を向けていました。思えば倉田さんと、挨拶以外で初めて会話をした夜となりました。
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