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できるならずっと刑務所にいたいです。毎年冬至の時期を迎えるたびにその思いが強くなります。
そして植田さんのように、軽犯罪を繰り返して刑務所と娑婆を行き来する人の気持ちもわかってきます。どう考えても刑務所の方が、娑婆よりも安心できるのです。
しかし無期囚や死刑囚でも無い限り、受刑者はいつか刑期を終えて出所します。その時どうするのか。満期を迎えるまで二年を切っているというのに、僕にはその考えが全く浮かばないのでした。
刑期の終了日が近づくと、出所後の生活について面談する機会が設けられます。僕は服役に際して仕事、家、家族とかけがえのないものを全て失ってしまいました。このまま娑婆に出たら、ホームレスしかありません。心底そのようになりたくないと思いますが、僕一人ではどうしようもありません。
「ここでの経験を活かして、介護福祉科で学んでみてはいかがですか」
面談の担当者は、いつかの阿澄さんと同じことを言いました。
看守のように高圧的なところはなく、自由を制限されたこの刑務所では仏様みたいに優しい人です。
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