24人が本棚に入れています
本棚に追加
この家の主であった祖父は、漫画家という少し変わった生業からか、
やや破天荒にも思える人柄だった。
その息子である玲子の父は祖父と性格的に合わず、大学進学と共に、
この家を出てからあまり寄り付こうとしない。
だが、そんな父に成り代わるかに、玲子は幼い頃から祖父母もこの家も
大好きで、週末や長い休みといえば我が家のようにこの家で過ごしたものだ。
だから玲子は、大学に入学して間もなく、祖父亡き後、独り暮らしをしていた祖母の助けにという名目で、この家に移り住んだ。
それから、七年。今も祖母と一緒に、この家で暮らしている。
破天荒だった祖父に、いつもニコニコと包むように寄り添ってきた祖母との
暮らしは至って穏やか。
女性の二人暮らしにしては会話も静かで、その中に二人で可愛がっている
文鳥夫婦の小さな話し声が聞こえてくる。
そして玲子は、むしろ、この古さと穏やかさが作る空気が好きだった。
最初のコメントを投稿しよう!