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実際、彼女は元々人見知りで、華やぐお喋りも苦手。
人間関係も、距離を置いての付き合いを好む。
そのせいで、知り合いはいても、友達といえる人が身近に居た記憶がない。
そして、もちろん恋愛との縁は、もっと遠かった。
だがそんな玲子にも、淡い恋の思い出が一つだけある。
それは、中学生二年の夏。
中学に入ってから恒例になった、夏期講習でのこと。
だが当時も仲良しの友達はなく、授業以外の時は一人で自習室に居ることが
多かった。
その中、同じように一人で自習室にいる少年の存在は気付いていた。
だが、彼もあまり社交は得意ではないのか、言葉を交わすことはない。
ところがある日、彼が落とした消しゴムを拾ったのが切っ掛けで
会えば挨拶をするようになり、数日後には分からない所を
互いに教えあったりするくらいに距離が近づいた。
だが、なんとなく互いに自己紹介もせずにいたため、玲子が知っていたのは、
彼のノートに書かれた「TAKUMI」という名前だけ。
それでも、人見知りで友達もなかった玲子にとっては、
ちょっぴり胸がときめく夏になった。
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