1 週明けの衝撃

3/14
前へ
/14ページ
次へ
実際、彼女は元々人見知りで、華やぐお喋りも苦手。 人間関係も、距離を置いての付き合いを好む。 そのせいで、知り合いはいても、友達といえる人が身近に居た記憶がない。 そして、もちろん恋愛との縁は、もっと遠かった。 だがそんな玲子にも、淡い恋の思い出が一つだけある。 それは、中学生二年の夏。 中学に入ってから恒例になった、夏期講習でのこと。 だが当時も仲良しの友達はなく、授業以外の時は一人で自習室に居ることが 多かった。 その中、同じように一人で自習室にいる少年の存在は気付いていた。 だが、彼もあまり社交は得意ではないのか、言葉を交わすことはない。 ところがある日、彼が落とした消しゴムを拾ったのが切っ掛けで 会えば挨拶をするようになり、数日後には分からない所を 互いに教えあったりするくらいに距離が近づいた。 だが、なんとなく互いに自己紹介もせずにいたため、玲子が知っていたのは、 彼のノートに書かれた「TAKUMI」という名前だけ。 それでも、人見知りで友達もなかった玲子にとっては、 ちょっぴり胸がときめく夏になった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加