1 週明けの衝撃

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今から思えば、なぜあの時に彼の名前も尋ねなかったのだろうと 少し悔やまれる。 いや、正確には、玲子も尋ねようと思っていた。 だが、その隙を与えずに、彼の低い声がポツリと言ったのだ。 「俺さ、来月から長崎の学校に転校するんだ」 えっ?  再び思いも寄らない事を言われ、思わず玲子は隣の彼に目を向けた。 だが、彼は視線を手元のノートに落としたまま。 「それで、えっと、もう会えないかもしれないんだけど……」 なんとなく言葉が繋がらなくなった彼の横で、妙な緊張感に包まれた玲子も 声を失くしていた。 そして「あの……」とぎこちなく言葉を繋いだ彼が、チラリと玲子に 視線を向ける。 だが、その途端、彼はいきなり勢いよく立ち上がった。 「やっぱ、いい……」 「えっ……?」 しかし彼は、さっと自分の荷物をまとめると、そのまま続きを言わずに 出て行ってしまう。 そして玲子もまた、どこか呆気にとられ、頭が空白になったまま 彼の後ろ姿を見送るしかなかった。
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