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ところが、そんな夏休みが明けた新学期初日の朝。
玲子は、靴箱で一通の手紙を見付けた。
果たして差出人の名前は、「巧」。
自分が子供であることの無力さを痛感した。
そんな転校を嘆く文章で始まったその手紙は、なんとラブレター。
そして、二人の間に運命が結ばれているなら、必ず再び会えると信じている。
そう結ばれた手紙に、玲子の脳裏に塾の自習室で見送った
「タクミ」の後ろ姿が浮かんでくる。
それと同時に、自分が彼の転校先も引っ越し先の住所も知らないことに、
この時やっと気付いたのだった。
互いに、13歳。まだ恋にも実りきらない、淡い想い。
永遠の想いのように言われても、正直、それを真に受けるのは
馬鹿げすぎていると分かっている。
それでもそれ以来、彼の存在が玲子の中のどこかに引っ掛かっているのは
事実。
その一方で、思春期を迎えても、大人になってからも「恋」というものに
今ひとつ心が動かない。
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