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実際、学生時代は、周りの女の子たちが楽しげに恋バナに花を咲かせていても
気にならなかった。
いや、むしろその話を振られないように、そんな輪からは
いつも以上に、そっと距離を置いていたと思う。
そして恋のご縁が遠い環境も手伝って、社会に出た今も、
どうにも恋愛に心が動かないままだ。
私、おままごとみたいなたった一通のラブレターで満足しちゃったのかな。
だが当の「タクミ」にとって、あの手紙の想いは過去の幻になっているに
違いない。
それどころか、玲子のことなど、もう憶えていないかもしれない。
しかし、そんな現実に焦りや気落ちは感じない。
むしろ玲子は、今の穏やかな時空に包まれた暮らしに満たされたものを
感じている。
そして窓辺に歩み寄り、なんとなく庭に視線を投げた玲子は
ふっと淡い苦笑に口元を歪めた。
どうしたんだろう、急にあんな昔の手紙のことなんか思い出して。
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