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 もうもうと湯気の立つ血の池、尖った剣でできた山。  鬼に追い立てられた罪人の叫びが赤い世界にこだまする。  地獄――。  というものに対するイメージが、いつ、何によって刷り込まれたものなのか、改めて考えてみるとはっきりしない。  絵本か、アニメか。音があった気がするから、映像だろうか。  生前に、わるいことをしたら、地獄行き。  嘘をついた子は、舌を抜かれる。  頭の中にあるおどろおどろしいイメージを、こどもの頃にTVで見たとしたら軽くトラウマになりそうなもんだが、親は止めてくれなかったんだろうか。とちょっと思う。  俺が親だったら、あんまり幼いうちに見せたらかわいそうじゃないか、なんて思うけど。  まあ、そんな仮定の話を、いくら考えたところで、もう役にも立たないのだった。  俺には一生こどもなんかできない。……死んでしまったから。  サークルでキャンプ行った帰りに車が事故って、享年二十歳。  あんまり悪いことした覚えもないけど、たぶん地獄行き。
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