19人が本棚に入れています
本棚に追加
壱
もうもうと湯気の立つ血の池、尖った剣でできた山。
鬼に追い立てられた罪人の叫びが赤い世界にこだまする。
地獄――。
というものに対するイメージが、いつ、何によって刷り込まれたものなのか、改めて考えてみるとはっきりしない。
絵本か、アニメか。音があった気がするから、映像だろうか。
生前に、わるいことをしたら、地獄行き。
嘘をついた子は、舌を抜かれる。
頭の中にあるおどろおどろしいイメージを、こどもの頃にTVで見たとしたら軽くトラウマになりそうなもんだが、親は止めてくれなかったんだろうか。とちょっと思う。
俺が親だったら、あんまり幼いうちに見せたらかわいそうじゃないか、なんて思うけど。
まあ、そんな仮定の話を、いくら考えたところで、もう役にも立たないのだった。
俺には一生こどもなんかできない。……死んでしまったから。
サークルでキャンプ行った帰りに車が事故って、享年二十歳。
あんまり悪いことした覚えもないけど、たぶん地獄行き。
最初のコメントを投稿しよう!