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前向きにがんばることを決めた俺に、閻魔はふふっと微笑み、吸い込まれるような琥珀色の瞳で見つめてきた。
「よろしく頼む。鬼への転生は、ひと晩で終わる。明日の朝から、さっそく勤務だ」
「はあ……よろしくお願いします」
昨日までは生きていたのに、今日は死んだ後に就活に成功し、明日から新入社員(?)だなんて。
人生というものは、時に、急転直下の展開を見せるものだ。
少しばかり、気後れしていると、閻魔はできる上司という感じで指示を出した。
「案ずるな、最初は教育係をつける。OJTだ。ゴトーという者が迎えに行くから、そいつと一緒に、まずは甕川(みかがわ)鹿乃(かの)という罪人に会え」
「みかがわ……かの……ですね。わかりました」
「彼女は百年近く地獄にいる古株だ」
――百年。
そんなにも長く、苦しい罰を受け続けているなんて。
一体どれほど重い罪を犯した人なんだろう。
圧倒されるものを覚えながら、そうか、とんでもない悪人に接する機会も、これからは増えるのだなぁ、と思うと、なんだか身震いしてしまいそうだった。
こんな仕事、俺なんかに務まるんだろうか。
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