3/6
前へ
/28ページ
次へ
 居合抜き、というのか、鞘から抜けて跳ね上がった刃が、甕川鹿乃の首をぽーん! と高く斬り上げた。  地面に残った体が、ぶしゃあぁあぁ! と、壊れた水道みたいな勢いで鮮血を跳ね散らす。  なまあたたかい血が、頭から降り注いだ。 「あああんた何するんですか!?」  エリア統括長。こいつ、ヤバすぎるだろ。  警察呼ばなきゃ。  さ、殺人だぞ!?    目の前で行われた凶行に、俺の思考は完全にバグっていた。  罪人以前に、こいつを取り締まらなきゃ。  なんでこんな。  今、目の前で喋っていた女性をいきなり殺すなんて――  俺の動揺に構わず、彼は表情ひとつ動かさずに、鹿乃の体の傍に膝をついた。  ぼそり、と低い声を、彼女の耳元に落とすようにする。    『――甕川鹿乃。活きよ……』 「いやいや、どういうことか説明……!」  俺の言葉は、途中でちぎれて、宙に浮いた。  ――エリア統括長……ゴトーさんの、ツノが、光っている。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加