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居合抜き、というのか、鞘から抜けて跳ね上がった刃が、甕川鹿乃の首をぽーん! と高く斬り上げた。
地面に残った体が、ぶしゃあぁあぁ! と、壊れた水道みたいな勢いで鮮血を跳ね散らす。
なまあたたかい血が、頭から降り注いだ。
「あああんた何するんですか!?」
エリア統括長。こいつ、ヤバすぎるだろ。
警察呼ばなきゃ。
さ、殺人だぞ!?
目の前で行われた凶行に、俺の思考は完全にバグっていた。
罪人以前に、こいつを取り締まらなきゃ。
なんでこんな。
今、目の前で喋っていた女性をいきなり殺すなんて――
俺の動揺に構わず、彼は表情ひとつ動かさずに、鹿乃の体の傍に膝をついた。
ぼそり、と低い声を、彼女の耳元に落とすようにする。
『――甕川鹿乃。活きよ……』
「いやいや、どういうことか説明……!」
俺の言葉は、途中でちぎれて、宙に浮いた。
――エリア統括長……ゴトーさんの、ツノが、光っている。
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