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雨の牢獄
閉じ込められたまま、私は自分の言葉を綴っていた。
ここに連れてこられてから、もう1カ月がたつ。
どこにいるのかわからない。外の世界とつながる手段もない。今、国で何が起こっているのか、私は知らない。
ただ、書き続けている。
この部屋には鍵もなく、見張りの一人もいない。建物を囲う塀もない。
必要ないからだ。
ここに連れてこられた時、私は聞かれた。
「逃げようと思うか?」
私は答えた。
「思わん」
やつは冷酷な笑みを浮かべて言った。
「それが懸命だ」
聞くと、ここは1年のうち300日は雨が降る、永遠の雨季の中にある地のようだ。
部屋の窓から外をのぞく。
雨は強く降りそそぐ。空は重い灰色の雲で覆われている。前回雨がやんでからもう2週間たつ。
昼も夜も。星さえ見ることは叶わない。
辺りは一枚の石を地面に貼り付けたような、単色で平らな荒野だ。見渡す限り、屋根のある建造物どころか、葉を広げた木の一本もない。
「逃げようものなら、3日もたたずに命尽きるだろうからな」
閉じ込められたまま、私は自分の言葉を綴っていた。
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