宇宙は今日も雨だった

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 男は言った。 「地上にあるほうが方舟『らしい』のにな」 「らしい、けど危険でしょ。海には豪華客船があるから良いんじゃない?」 「理論が全然違う。豪華客船じゃ生き残れない」  水と食料の確保。人との軋轢。動力源の供給に、船を動かす人を養うこと。生活できる地面を得た所で、問題は山積している。  船に溜まった雨水の排出と飲み水の精製、生活用水、それを乗船者に平等に配布。食料だって海から自給していくにも限界はあるだろう。漁船じゃないのだ。網もなれけば、餌にも困る。仮に捕獲できたところで一、二匹じゃ乗船者分全員の分など到底不可能だろう。すると争いが起こる。盗みや強奪、性犯罪などが逃げ場の無い船内で横行する。人が人を間引き、飢えた人から命を落とす。日に日に人数が減る。  いずれ自滅するのは自明の理だ。  余程優れた指導者がいて、全員がその者に異を唱えることなく従順に従うことが可能なら、豪華客船という一つの集落として生き延びることはあり得るかもしれないが。  軍人でもない限り、それは難しいと言えよう。
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