宇宙は今日も雨だった

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 ──人は脆い。  追い詰められれば同じ考えでない人間はことごとく排除できる。人数が多ければ多いなりの、少なければ少ないなりの、衝突が諍いが必ず起きる。 「海底都市、衛星都市、月のテラフォーミング、火星への移住、宇宙船の地球(スフィア)化……どれが最初に現実化するのか分からないけれど、完成すれば莫大な援助を得て、私たちは生き残れる権利を獲得できる」  リンダは呟いた。決意を、祈りのこもった重い呟きを。  ノア、と名付けられたこの船の現在の乗船人数は十人。  ああ、たった十人だ。  だが最高の頭脳を持った最優の十人だ。そうでなければ、この船に乗る資格は無い。  月と地球を文字通り足の下に臨みながら、日々研究と実験に勤しみ、この船の中で循環を可能とした生活様式を創りあげる。  それは並大抵の知識と精神では到底出来ない神の所業とも言えた。
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