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「共に歌う人が居れば、いつか宇宙にも雨が降るよ。
そうすれば──」
「もうやめて、その話は。考えたくないの。私にとって雨は雨で、H2O以外の何物でもない。私には貴方の言うようにはとても思えそうもないのよ、ボブ。
夢の話なら要らないわ」
正義と正義がぶつかる時、そこに生まれるのは戦争だ。
それぞれの信念があり、それぞれの思考があり、それぞれの想いがある。もしそれが自分に理解出来なかった時、人が取る選択は二つしかない。
認めるか、否定するか。
そして往々にして多くの者は後者を選ぶ。排除する方が議論を交わすより楽だからだ。それはヒトの業とも言えるべき愚かしき、そして呪しき所業。
故に「地球化」が実現から一番ほど遠い。
過去何度も実験を試みては、初期の段階で頓挫せざるを得なかった「箱庭地球化計画」。システムに問題があるのか、それを運営する人間側に問題があるのか、はたまた根本理論から破綻しているのか。
いずれにせよ、小さな水槽の中に生命を詰め込んで円環させることの難しさは、ぶつかってみるまで予想もつかない問題を生むのは必定なのだ。
だからロバートは微笑んで口を噤んだ。
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