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浪漫と理論を頭の中で融合させながら、彼は現在直面している植物循環の問題に取り組んだ。書き割りの空の下で、水と植物の生まれては消えゆく儚さと恩恵、太陽光と暗闇の織り成す生と死について想いを馳せた。
そして、懐かしい詩でも諳んじるように、男は言った。
「でも案外、地上に残された逃げ場のない人間の方が、環境に適応して生き残ってしまうかもしれないけどね」
だがそれは果たして「人間」と呼べるものなのか。
そうかもしれないし、そうではないのかもしれない。
どちらにせよ世界に名を連ねる権力者は地上を見下ろすべく、地球外に移住を決めた者たちばかりだ。彼等は連綿と自分たちを育んでくれた土地をあっさりと捨て、次世代を育てる場所に空気も水も緑もない土地を選んだ。
そしてそれは、この船に乗った者も例外ではない。
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