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綺麗な黒髪、力強い腕、私を呼ぶ声、私の中を抉る全てが愛おしい。
「お前、まさかそれ誕生日ケーキ?学食でひとりで食ってんの?お前友達いないの?」
「……放っといてよ」
「なんで電話に出ないんだよ」
私は答えなかった。ゆいに嫉妬して、この関係にもう限界を感じてるなんて、そんな簡単に説明出来ない。
無視してケーキを食べ終わり、トレーと食器を返却して外に出た。光貴は無言でついてくる。後ろにいる光貴が言った。
「杏子、誕生日おめでとう。何か欲しいものある?」
欲しいのはあなたの心ですよ。
そう言えばよかった。言わなかった事をあとで何度も後悔した。
私が言ったのは真逆の事。
「ねーの?」
「……ある」
「何?」
「もう終わりにしたい」
終わるも何も、付き合ってすらいなかったのだけど。
振り返るのが怖くて、私はそのまま話し続けた。
「飽きたの?」
「うん、そー。飽きたの。じゃーね」
勝手に涙が出てきたから、私は走って逃げた。
光貴は勿論追いかけてこない。
……捨てられるのが怖くて自分から壊したら、思ってたより辛かった。
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