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「お前、なんで姉ちゃんの名前知ってるの?」
「8時半のモーニングコールってお姉さん?!」
「なんで知ってるんだよ!恥ず!!」
……なぁんだ……私ばかだな……聞けばよかった。
「なんで私の声では起きないのに、お姉さんだと起きるの?」
「昔から鬼のようにコエーんだよ、ゆい姉は。中学生の頃、よく蹴り飛ばされてた。だから体に刷り込み済みなんだよ。……杏子は優しいから、つい甘えちまう」
「え、全然優しくないよ」
「……優しかったぜ?ああ、こいつ、俺に惚れてんだなってうれしかった」
「そんな事思ってたの?恥ずかしい!」
歩みを止めて私の手を引っ張るから、「何?」と私が見上げると光貴が言った。
「杏子が俺の名を呼ぶ声を聞きながら微睡むの、最高に気持ち良かった。そして気づいた。始めは体からだったけど、俺はいつの間にかお前と過ごすのが好きになっていた。お前の事が好きになってた」
「そういう事はもっと早く言ってよぉ……」
ずっと我慢してた涙がボロボロ落ちてくる。
「泣いたらブスだな、お前」とか悪態つくから「だったらもう泣かないように優しくして」と言ったら、光貴はやけに素直に「そうだな」と答えた。
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