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 オレはわざと大きな足音を立てて、階段を上った。    女子の声が止まる。  顔を上げるとそこに、安村と、四組だったか五組だったかの、南が居た。  南は気まずそうな顔をしてうつむくと、オレが通り過ぎていくのを待っているようだった。  そんな南のすぐまえで、立ち止まる。    顔をゆっくり上げる南を見ながら、オレは立てた親指で、勢いよく自分のうしろを指差した。南ははっとした表情をすると、何も言わず、逃げるように階段を駆け下りていった。  オレはしばらく、南の後ろ姿を目で追っていた。 「安村……。ごめんな……」 「えっ……」 「オレ、帰るわ……」 「え……?」  安村の顔を見ることなく階段を下っていくと、オレは教室がある階も通り越した。 「本宮……?」  安村の(かす)れた声が、うしろで小さく聞こえた。
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