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ジャガーの戦士
宮殿の門は破壊されていたが、歩哨が二人。そのうちの一人が、小便にでも行くのか、持ち場を離れた。残った一人は兜をつけていない。油断というつもりもないのだろうが、付け入るには十分な隙だった。
オセロトルは足音を立てずに進んだ。門番ぐらいは声をたてさせずに殺したかったが、もともと、騒ぎを起こして海賊たちを働きやすくさせるのが仕事だ、どちらでもよかった。
マイラ・ベルから渡された「鎧通し」を走りながら投擲する。「鎧通し」は歩哨の眉間に刺さった。倒れる前に追いつき、音をたてぬようその体を支え、壁にもたれたように座らせる。とっくに絶命している。オセロトルは身体を平たくし、影そのものとなってその場で待つ。
やがて、もう一人の歩哨が帰ってくる。座り込んでいる相棒のほうを見る。その、喉元。
「鎧通し」をかざし、踏み込む。と同時に体を槍のように伸ばす。
チェインメイルで守られた首元を、「鎧通し」は見事に貫いた。歩哨が血を噴き出しながらよろめく。声は出ない。声帯を破壊している。それでも腰の剣を抜こうとする。その動きで、脇の下の急所が開く。
「鎧通し」を再び、柄本まで叩き込んだ。
心臓に届いたのだろう、やがて歩哨は動かなくなった。
少年は振り返った。
感服しました、とでもいうように、数メートル背後で腕組みをして見ていた女海賊が、大げさな身振りで驚いて見せた。
「人の殺し方は知ってるんだ。それだけ知ってるんだ」
少年は呟くように言った。聞こえなくてもいいせりふだったが、女海賊は苦い笑みを浮かべてみせた。
静かに歩み寄ると、少年の肩を一瞬ぐっと抱き寄せ、そして背後の仲間に合図を送った。
海賊たちは倉庫を襲い、食料と弾薬と短艇を奪う。
マイラ・ベルと少年はひたすら暴れ、騒ぎをつくりだす。
海賊の戦いの、始まりだった。
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