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盗まれた太陽
満足と言うほどの戦果ではなかったが、一人も欠けることなく、短艇は海賊のねぐら近くまでたどり着いた。しかし船を降りたとたん、オセロトルは眉をひそめた。
血の匂い。まだ新しい。
まだ距離がある。そこから洞窟自体を視認することはできない。しかし、そちらに目をやったとき、驚くべきことが起こった。
星が地面から飛び出して、空に駆け上がっていったのだ。一定の高さに達すると、大きく旋回して西の砂漠地帯へと向かっていく。
星ではない。あの光は、少女の体温の色だ。
「なんだい、ありゃあ?」マイラ・ベルがのんきな声を出す。
少年は答えなかった。そういう余裕がなかった。影の中のジャガーと身体を入れ替えると、全速力で星を追って駆けた。
手近の山頂に駆け上がる。わずか数分のことだ。
星はらせんを描きながら、ゆっくりと砂漠の一点に降下しようとしていた。
明らかに、鳥類の動きだった。
ぜえ、ぜえ、という声が背後から近づいてくる。マイラ・ベルだ。
「すまない、姫様を誘拐された」
「わかってる」
「敵は、インディオ一人だったというんだ。すたすた洞窟の中に入ってきたと思ったら、いきなりばかでかい鷲に化けたというんだ」
少年の頭の中をいくつか憶測が駆け巡ったが、結論は出さなかった。
答えが何であれ、あそこに行かねばならない。可能な限り、速やかに。
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