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ラマナイの影
ラマナイが舞うように脚を上げる。踏み下ろす。
二度目の衝撃波。
オセロトルはとっさに横に飛んでかわす。
床に刻まれた波は扇状に広がり、オセロトルよりも後ろ一メートルほどで途絶えている。考える間もなく次の攻撃が来た。
衝撃波の行く手に少女!
とっさに遮った。
まともに食らっても死ぬような攻撃ではない。だが、服を突き破って全身に石片が突き刺さる。度重なる出血は、確実に集中力と体力を奪う。オセロトルは膝をついた。顔の片側に激痛が走る。視界の右半分がぼやける。目を、やられたか。
ラマナイは少女をかばったオセロトルを見て薄笑いを浮かべた。
「そう、そうするだろう。おまえにはそれしかできない」
オセロトルには、少女の無事を確認する余裕もない。しかしここで、ラマナイは数歩、後ろに下がった。
そしてまた、あの死の舞踏を繰り返そうとする。
少年は気づいた。
「わかったぞ、おまえの射程距離!」
「だったらどうした」
「――おまえの影の秘密もだ!」
つかのま、ラマナイの動きが止まる。だが来る。衝撃波。
オセロトルは賭けた。全身のばねで斜め後方に跳んだ。背中が壁にぶつかり、松明が落ちる。
衝撃波は床の途中で止まった。少女も、オセロトルも傷つけずに。
「靴の下には必ず影!」
「それが分かったところで――」
ラマナイのせりふは、途中で「ぐわぁっ!」という叫び声に変わった。
オセロトルは、このタイミングで「鎧通し」を投擲したのだ。
眉間の急所を狙ったが、片目が見えないためにわずかにそれた。それでも、短剣はラマナイの左目に突き刺さった。
間髪おかずオセロトルは動いた。
立ち上がり、背中で壁にぴたりと張り付く。
オセロトルの体とぴったり同じ形の影の中から、泥のように黒いジャガーの姿が滲み出し、少年の姿を覆っていく。
ラマナイは片膝をつき片目を覆い苦痛に顔をゆがめながら、残った右目を驚愕に見開いた。
人とジャガーのまじりあった、見たことのない生き物がそこにいた。
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