神話

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神話

 第三紀の終わり、すなわち現在の人類が創造されたとき、天と地は闇に覆われ、世界は冷え切っていた。神々は集まって、この世を温め明るく照らし出す何かが必要だと話し合ったが、そのようなものを作り出すためには神々の中の誰かが犠牲にならなければならないことが分かって、皆しり込みした。季節が闇の中で百たび巡るほどの間焚火を囲んで話し合ったがいっこうに結論がでず、ずっと黙っていた最高神の末の娘が立ち上がり、自分が生贄になると宣言した。金色の髪をした女神が仲間たちが止めるのも意に介さず焚火の中に身を投じると、燃え盛る光の球が火の中から飛び上がって天に昇った。これが太陽の起源であり、これが第四紀すなわち我々人類の時代のはじまりである。  朝に夕に空が赤く染まるのは、この女神が血を流しているからである。  故に我々は金星の一周期ごとに新たに生贄をささげ、女神に生命力を注ぎ込まなければならない。  いかなる神々も、天地さえも、命には限りがあって永遠ではない。生贄を絶やしたとき、太陽は息絶えて天から落ちるであろう。世界は再び、闇に覆われるであろう。  
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